開業医が最初に覚えたい経営の数字5つ
開業すると、毎月たくさんの数字が届きます。試算表、レセプトの集計、給与、借入の返済予定表。すべてを細かく見る時間は、診療をしながらではとても取れません。
そこでこの記事では、院長が「まずこれだけは自分で押さえておきたい」経営の数字を5つに絞って紹介します。税理士の先生に任せている部分も、この5つを自分で読めるだけで、相談の質と判断の速さが変わります。
1. 医業収益(売上)は「患者数 × 単価」で分けて見る
売上の合計だけを見ていると、増えた・減ったの理由がわかりません。売上は次のように分けて見ると、打ち手が見えてきます。
売上が下がったとき、患者数が減ったのか、単価が下がったのかで、考えるべきことはまったく違います。患者数なら予約や待ち時間、地域での認知。単価なら診療内容や検査の組み立て。まず「どちらが動いたか」を確かめるのが第一歩です。
2. 人件費とその割合
病院の費用の中で、大きな割合を占めやすいのが人件費です。人件費は、売上に対して何割になっているか(人件費率)で見ると、増員や昇給の判断がしやすくなります。
ただし、人件費は「低ければよい」わけではありません。スタッフが定着しないと、採用と教育に見えない費用がかかり、患者さんへの対応の質も落ちます。大切なのは、自院にとって無理のない水準を知り、その範囲で人に投資することです。業界の目安を知りたいときは、公的な調査や顧問の税理士に確認するとよいでしょう。
3. 固定費と損益分岐点
家賃、リース料、借入の利息、常勤スタッフの給与などは、患者数に関係なく毎月かかる「固定費」です。一方、検査の外注費や薬剤・材料費などは、患者数に応じて増える「変動費」です。
この2つを分けると、「月にどれだけの売上があれば赤字にならないか」=損益分岐点がわかります。損益分岐点を知っていると、診療日を増やす、機器を入れる、スタッフを増やすといった判断を、感覚ではなく数字で考えられるようになります。(計算の方法は、別の記事「クリニックの損益分岐点の考え方」でくわしく説明します。)
4. 手元のお金(キャッシュ)と、借入の返済
「利益は出ているのに、なぜか口座のお金が増えない」。これは開業医によくある悩みです。理由の多くは、利益とお金の動きのずれにあります。
- 借入金の元本の返済は、費用ではないので利益からは引かれないが、お金は出ていく
- 保険診療の報酬は、診療した月から入金までに時間差がある
- 機器の購入代金は一度に出ていくが、費用(減価償却)は何年かに分けて計上される
毎月、口座の残高が何か月分の固定費をまかなえるかを見ておくと、急な出費や患者数の落ち込みにも慌てずにすみます。
5. 数字の「流れ」:前年同月と比べる
1か月だけの数字では、良いのか悪いのか判断できません。季節によって患者数が動く診療科も多いため、前の月ではなく前年の同じ月と比べるのが基本です。
売上、患者数、単価、人件費、手元のお金。この5つを前年同月と並べた表を1枚つくり、毎月10分見る習慣をつけるだけで、変化の兆しに早く気づけます。
| 見る数字 | 見るポイント |
|---|---|
| 患者数・単価 | 売上の増減は、どちらが動いた結果か |
| 人件費(率) | 増員・昇給の余地と、定着への投資のバランス |
| 固定費・損益分岐点 | 赤字にならない売上の線はどこか |
| 手元のお金 | 固定費の何か月分があるか |
| 前年同月比 | 季節要因を除いた、本当の変化 |
まとめ
経営の数字は、全部を細かく見る必要はありません。院長が自分で押さえるべきなのは、売上を分解した「患者数と単価」、人件費、固定費と損益分岐点、手元のお金、そして前年同月との比較の5つです。この5つが読めると、税理士との打ち合わせも「報告を聞く場」から「判断を相談する場」に変わります。
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